業務標準化を阻む「お客さまファースト」の正体

業務標準化を阻む「お客さまファースト」の正体

会社の生き字引のような伝説的な事務プレイヤー。営業所のすべてを知り尽くし、取引先からも名指しで信頼を獲得している業務担当者。ものづくり産業には製品を生み出す工場現場だけでなく、このような長年にわたって後方を支えてくれている人材の力は欠かせません。

しかしときに、いざ業務改善やDXを進めようとすると、長年同じ業務を繰り返してきた手順を一新することは容易ではなく、結果としてベテランの業務がボトルネックになってしまうケースは少なくないのではないでしょうか。

裏にあるのは過度なお「客さまファースト」

新しいサービスを導入して省力化したい、若手に業務を引き継ぎたい、そう考えても「お客さまにご説明できない」「自分じゃないと対応が難しい」と動きが鈍くなってしまうことがあります。

これは単なる変化への抵抗、「現状維持バイアス」で片付けることはできません。その裏にあるのは、根強い「お客さまファースト」の精神です。

長年培ったお客さまとのツーカーのやりとりにひびが入ることへの恐れや、若手に任せたことでのわずかなミスが生じたり、誤った意図でお客さまに伝わったりすることを極端に嫌う心理があります。また、変化を加えたことでお客さまから1件でも苦言を受けると、まるで全社的なクレームのように捉えてしまう傾向があります。これは、お客さまを大切にする責任感のあまり、視野が目の前のお客さまに極端に集中している状態に陥っているといえます。

視野が限定的になるのは自然なこと

ここでそのような視野になるのは、決して本人のスキルの問題ではありません。このような状況を生み出しているのは、これまでの日本の企業構造によるものといえます。

今でこそ多様な働き方を受容し、性別や年齢、職種にかぎらないさまざまなキャリアを描くことがあたりまえになりつつありますが、ベテラン業務担当が支えてきた時代がそうだったとはいえません。明確なキャリアパスはなく、昇進昇給の機会もじゅうぶん用意されていないことがほとんどだったのではないでしょうか。

目の前の業務にミスなく対応して営業をサポートする、という求められた役割に忠実に、真摯に応えてきたはずです。そのなかで得られる「お客さまからの感謝」「自分にしかできないツーカーのやりとり」は、自らの大きな存在価値として刻まれてきました。長年、一定の視野に集中してきたところから、いきなり全社的な視野に広げるのは困難なことです。

自発的な業務改善に頼る限界

ここまでの背景を考えると、DXやAIの時代だからといって、急に業務改善に向かうことをベテラン業務担当に期待するのは、いささか都合のいいシナリオかもしれません。「これまで真面目にやってきただけなのに」「ノウハウを標準化しろと言われても、それが自分の価値なのに」というのが偽らざる本音でしょう。

この感情を慮れば、自発的な取り組みというレベルでDXが進まないことは明らかです。いかに個人の負担を増やさず、システムとしてノウハウを見える化し、効率化し、全社に還元できるものにするか、ドライで実利的なアプローチが必要です。たとえば、ブラックボックス化している紙資料や個人メールでのやりとりは残っていないでしょうか。これらをメンバー間で共有できるシステムを導入すれば、ベテラン業務担当がどのような工夫をしているか、ちょっとした言葉のつかい方を、若手も業務のなかで自然に学び取ることもできるようになります。

客観的なメスでノウハウを開示

人手不足が深刻化を増す昨今、ベテラン業務担当への依存は大きな経営リスクのひとつともいえます。かんたんにノウハウを開示できないのは、本人の強い責任感ゆえのことです。悪気はないからこそ、感情のひっかかりを避けてテクノロジーの力で客観的なメスを入れることこそが、ベテラン業務担当への敬意を示しつつ業務改善を一歩動かすことになるのです。


見積・注文の営業事務を見える化、効率化させるサービス「アペルザDESK」。FAXやメールで届く見積依頼や注文の内容をチームで共有し、自動でデータ作成します。ベテラン業務担当がどのような対応、工夫をしているか、自然にノウハウを開示することにつながります。

書いた人

関尾 潤

制作・編集職として事業会社と受託制作会社の双方を経験し、上流の事業立ち上げから下流の執筆・デザインまで一気通貫で対応。アペルザ入社後はマーケティング企画や営業ツール制作を担当。制作者と事業者の両視点を活かしてコンテンツを発信します。

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