“モノ”を探している人たちとは、いずれ出会う。
アペルザを使う理由は、“コト”に関心がある人たちと出会えるから。

これが有効な中小企業の戦い方なのではと考えている。

取材=2019年3月 ◎ 文・写真=下宮慎平

 神奈川県相模原市に本社を構えるマイクロテック・ラボラトリー株式会社(以下、MTL社)は、ロータリエンコーダやACサーボモータなど、回転計測・制御機器の専業メーカーだ。自社で一貫して、企画・設計から製造、販売、サポートまでを対応。製造はISO9001/14001認証を取得した国内工場ですべて行っている。
 MTL社の主力製品であるロータリーエンコーダは、機械系と電気系の橋渡しとして重要な役割を持つ制御機器のひとつだ。同社のエンコーダの最大の特長は高分解能。高精度の位置決めなどに活用することが可能だ。現在の顧客は、中小メーカーや研究所、大学等が中心で、製品ラインナップの多様性に加え、仕様やロット台数などの柔軟性を評価する声も多い。
 1981年に創業した同社は、現在70名。その内、セールス・マーケティング関連業務に携わっているのが8名だ。今回、アペルザでは、営業部 課長の逸見氏と、同係長の平氏に、MTL社におけるセールス・マーケティングへの『アペルザ』の活用状況について話を聞いた。

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― 2018年からアペルザをご活用いただいています。採用に至った背景を聞かせていただけますか。

営業部 課長 逸見徹也氏

逸見:実は当時、別の製造業専門メディアからも広告サービスの活用提案が来ていました。でも、そっちはお断りしました。我々の顧客アプローチの考え方は、「ユーザーのレベル別に入口を設けること」だったからです。

 我々の製品はニッチです。だから、我々の製品が持っている特長やカテゴリ。例えば、小型サーボとか小型トルクモータとか、そのようなキーワードで検索する人とは、いずれ出会うのです。どういうことかと言うと、“モノ”を探している人であれば、自ら検索をするし、そのキーワードが具体的になればなるほど、結果として我々のホームページにたどり着く。自社のSEOが、そういう人たちをターゲットにしているので、それで十分来るだろうということです。

 今我々がアプローチしたいのは、まだそれが具体化されていない人たち。例えば「ロボット 自作」で検索するような、まだ大枠だけで技術的なアイデアがない。抽象的というか、「これからこんなことをしたい」というぼんやりしたキーワード。つまり“コト”レベルのお客様に対して、到達できる道筋が欲しかったんです。そこにどんな手段が有効かと考えたとき、アペルザはすべての条件を満たしていました。

 この資料は、当時社内でアペルザの採用を検討していた際に作ったものです。左側は依然として強力な手段ではありますが、今後ここがさらに伸びるということは期待できない。一方で、右側は伸びしろがあるところ。自社ホームページ、アペルザ、そして展示会の3つだと考えました。実際、3つ目に挙げた“展示会”は、今現在も有効な引き合い獲得の手段です。実際、ユーザーがどう情報収集しているかと考えると、展示会は広く情報が取れるし、ホットな情報もわかるから効率は良さそう。でも、展示会にはひとつだけ大きな欠点があったんです。

アペルザを見て感じた、オンライン展示会の可能性。
これが有効な中小企業の戦い方なのではと考えている。

逸見:専門展示会の多くは1年に1回です。でも、ユーザーからすれば展示会のタイミングは必ずしも買うタイミングじゃないので、検索したタイミングでちょうどいい展示会が開催されているとは限らない。でも、アペルザの『展示会連動特集』なら、去年のでも一昨年のでも、ストックされるライブラリとしてWebがある。いわば“オンライン展示会”です。まだ具体的な“モノ”まで至っていない、間口が広い探し方ができるという展示会の利点と、インターネット検索の“いいとこ取り”をしていたのがアペルザでした。これがアペルザを採用した理由です。

営業部 係長 平浩巳氏

:つい最近も「1年前の展示会で見たんだけど……」という話があったりするんですが、実際に展示会のタイミングで「これがほしい!」と言う人は本当にレアケース。アペルザの『展示会連動特集』なら、過去に掲載してもらったものも活きるし、ユーザーも情報をどんどん見ていけば、「あれ、MTLって毎回でてる」って気付いていただける。そこからうちのページに来てもらえれば、こんなものに最適ですよ、とかアプローチができる。

逸見:いわゆる検索エンジン対策は、しっかりやろうと思うとお金がかかります。特に、リソースも限られる中小企業では、すべての検索キーワードを全方位的に対策することは難しい。中小企業で、特徴のある商品開発、オンリーワンを目指したものづくりをしているならば、“モノ”レベルの、自社の製品の特徴を表すキーワードで対策をするほうが優先です。

 弊社においても、「DDモータ」、「小型サーボモータ」といったキーワードでは対策ができています。一方で「ロボット自作 モータ」、「生産設備 モータ」のような、“コト”レベルのふわっとしたキーワードは対策が手薄にならざるを得ません。そこを補完してくれるのがアペルザだと考えています。製品が差別化できているからこそ、自社のホームページでは、グーッと入っていったところのキーワードに絞って取っていくし、アペルザでは間口を広げたアプローチをする。これが有効な中小企業の戦い方なのではと考えています。

eコマースによって業務が効率化され、利益率も高くなっている。
始めてみて気付いたのは、もっと“新しいチャレンジ”ができるということ。

― 最近は『アペルザ eコマース』もご活用されていると聞いています。

逸見:弊社もはじめはアペルザの活用用途は、認知・周知活動、リード獲得がメインでした。昨年から『アペルザ eコマース(以下、EC)』がサービス開始し、活用を始めています。ユーザー側の目線に立ってみると、展示会名から商品まで辿りつき、興味を持つところで終了ではなく、購入(eコマース)まで行ける。Webが活用できる時代だからこその利便性だと思います。我々側の視点でも、裾野の、ふわっとしたところから、販売まで完結させられる。認知目標だけでなく、売上目標も掲げられるので、モチベーションもあがります。

:ECを活用しはじめたことで、「利益率」と「業務効率」という2つの点で、メリットを享受することができています。現在弊社のECのページに掲載されている製品は、すべて“定価”です。これまで通り口座を開設して、直接取引をする場合には、定価の80%で出していますが、問い合わせをいただいて、見積もりを返すときに、新規小口案件に対しては、ECのページのURLを入れて返しています。「少し高いですけど、こちらならカードでも買えますよ」と、お客様に選ばせる形にしています。もちろん、納期はどちらでも一緒です。

 どう考えても80%のほうが安いのですが、それでもECからクレジットカードで買うケースが一定数あります。実は、お客様側では社内の購入稟議などの手続きや、部門費用の計上の問題などで、通常のお取引のほうが逆にややこしく、ECからカードで購入してしまうほうが楽な場合があるんです。

 商社が常駐しているような会社の場合は、彼らに言えば買ってきてくれるので、そんなことはないかもしれませんが、社内システムがうまく構築されていなかったり、社内手続きに面倒な部分があったりすると、ECが重宝される。しかも、我々からすれば(アペルザに対する手数料を差し引いても)、10%は利益がアップするので、これは完全なる価値だと思っています。いっそのこと新規の窓口は全部ここに置き換えていきたいぐらい(笑)。

逸見:特にリピートのお客様は完全型式で検索されるので、3,000種類近くある既存の型式は、大変でしたが全部登録しました(笑)。現在は自社のホームページからもリンクさせています。

 当時、アペルザを導入した際、販売をeコマースに置き換えた場合に、対象となる取引がどれだけあるかを見積もりました。販売手数料を差し引いても1割アップ。それらをすべてここ(アペルザ)で買ってくださいと案内した場合の、年間での利益想定が算出できましたので、やりましょうと社内を説得した記憶がある。

:2つ目の「業務効率」ですが、アペルザを通して販売した場合、アペルザが間に入る形になります。弊社とアペルザの間での取引という形になりますので、アペルザの口座開設さえしてしまえば、あとはお客様ごとの得意先登録が不要になります。入金についても同様です。入金は注文ごとに個別ではなく、注文があった分を例えば10社なら10社分まとめてもらえるから、入金確認の作業も楽になるんです。eコマースによって利益率だけでなく、業務も効率化されている印象があります。

逸見:これは副産物ですが、ECを始めてから、施策を能動的にやるようになったのは大きな変化です。これまで自社ホームページが中心だったとき、ホームページはあくまで受け皿なので、基本的に受動的でした。今はECを始めて半年ぐらい、まだまだ助走期間だと思っていますが、ECができたことで、能動的に販売に結びつける施策が作れるようになりました。

― 具体的にはどのような施策でしょうか。

逸見:まだまだこれからですが、2つあります。ひとつは、「パッケージ化」です。顧客単価をあげていこうと思ったら、このモータに他のギアとか他のセンサーとかをくっつけるといいセンサーができる。それをパッケージ化して売りたい。でも、弊社はモータメーカーです。なので、パッケージに含まれる他社の製品については品質保証ができない。これまでは「保証できるのはモータだけなのに、パッケージ化したら、他社の製品まで面倒みないといけなくなる、トラブルシューティングしないといけなくなる、そこまでできるのだろうか?」と考えてしまい、踏み出せずにいました。

 でも今は違います。Webに動画を掲載し、「MTLの製品を使ってこんなことが実現できた」というのを出すようにした。動画の説明文には、「このパーツとこのパーツを使って……」といった“レシピ”を公開して、最終的にどんなものができるのかという、“実験の動画”を公開しました。あくまで実験として、保証の範囲も説明した上で、そこからEC内の限定公開の販売ページへ誘導するという流れです。

 公式サイトから普通にいったらモータしか買えない。限定公開の販売ページは、その動画の説明文にあるリンクからしか見ることができないので、その販売ページを見る人は、確実に動画を見て、その説明文を読んだ人だけです。「説明して十分理解してから買ってもらう」という手順を、Web上で実現することで、これまでの懸念を払拭することができます。

 楽をするための努力は惜しみません(笑)。それに間口も広げたい。だから、最初(の動画を作成するなど)は頑張りますが、それ以降はこのページに頑張ってもらう。今はすべて研究所のほうに行ってしまっているのでここにはありませんが、このようなデモ機の製作自体は、展示会用途などもあり普段から行っています。多分どこの会社も経験あると思いますが、実際に展示会でデモ機を展示していると「これで300万、400万だったら買うよ」という話をいただいたりします。それで実際に売るということはしていませんが、展示会だけでなく、Webの動画を見て「(これができるなら)こんな実験をしてみたい」という人が現れれば、新たな引き合いに繋がります。

eコマースによって実現されるWin-Winもある。
我々の“企業努力”が、ちゃんと“顧客満足”につながる。

逸見:もうひとつの施策が“特価”、利益は減りますが、いわゆる「期末セール」です。実はこれに関連するのが“即納”です。需要があるとは思っています。しかし、いままで対応してきませんでした。会社の方針として、リードタイムは捨てていたのです。

 何故かというと、「今すぐ欲しい」は大抵「壊れた」なんです。でも、定期的に買ってくれているようなところなら、そんなことは起こらないはず。だとすると、そのようなお客様がどれだけいるのか。会社として対応するだけの利益が取れるのか。これまで38年、エンコーダの事業をやってきて、そういう考えになっていました。

 新たに始めたモータの事業では、逆にその学びもあるからこそ種類を減らし、売れ筋はある程度在庫しておいて即日出荷したいと考えました。実際、アペルザ経由でも「即日出荷できないか」という相談を受けたことがあり、その思いは強くなりました。当然、決算の問題などもあるため、社内ではネガティブな意見が出ます。ここは社内調整、連携が必要な部分です。

 しかし、ECを使って「期末セール」で、いらない在庫を消すことができるなら、即納を希望するユーザーに対応でき、期末セールでは、コストで踏みとどまっていた人や、予算消化などのニーズが取り込める。お客様にとっても当社にとってもWin-Winになる。我々の“企業努力”が、ちゃんと“顧客満足”につながる、Win-Winの形だと思います。

:あと、これはあくまで一般論としてですが、ECを通じて定価を出していくことによる、“価格の適正化”という効果もあるんじゃないかと思います。

― “価格の適正化”とはどういうことでしょうか?

逸見:我々はメーカーなので、もちろん安く作ることもミッションです。ですが、せっかく安く作っても、市場価格でいくと、例えば、定価が10万円の製品が最終卸しを通るときには極端な話、50万になっているということもありえる。そしてそれをメーカー側ではコントロールできない。

:お客様からすれば、その50万の製品を他社の20万の製品と比べることになる。本来は10万円の製品が、中間流通でのマージンによって価格が上がってしまい、その結果「見積もりで負ける」ということが、この業界では一定程度起きていると思う。

 まだ始めたばかりではありますが、我々はWebで定価を出します。定価をアナウンスすることで、その適正化が図れる効果があるのではないかと感じているからです。我々が“企業努力”しているのに、コントロールできないところで値段が上がってしまう。それによって直接的な取引をしていないのに、「高い」という風評がついてしまうのはメーカーとしても本望ではありません。自分が知っている限りでも、3社や4社が間に挟まっているケースはある。そういうケースであれば確実に定価のほうが安くなる。

ネガティブな反応はすべて、逸見と自分が吸収してきた。
でも今はもう何も言われない。成果を出すから。

― 逆に、アペルザの導入にあたって苦労したことなどはありますか?

逸見:我々に限らず、社内の調整は大変だと思う。特に理由はないけどネガティブな反応する、というのは本当にあった。新しいことだから。でも「たいしたことないからとりあえずやろう!」と推し進めて、一度受注になれば後はもう何も言われない。

:社内の反対みたいなのは、逸見と僕のところで全部吸収して、もう勝手に1台目を売ってしまった、という感じですね。なぜかはよくわからないけど、「直販したくない」というか、「ECで売りたくない」みたいな反応。そういう新しいことを始めたくないみたいな社内の声で苦労している人は多いと思う。

― そのような社内の声を乗り越えるために必要なことはありますか?

逸見チャレンジャーがいることですかね。……自分なんですけど(笑)。それでうまくいったらもう言われない。売上も利益も伸びるから。懸念は払拭されたでしょと。

実は一度、諦めた。
でもアペルザを使って、そして、平とならやれると思った。

逸見:苦労している人は本当に多いと思う。だって私も、一度諦めてますよ。自分が営業だったとき。当時、ECサイト最初やろうと思った時は、ネガティブな言葉ですけど、「自分ではできない」と思って、やめちゃった経緯があるんです。

 一方、平は元々は調達部門で、在庫をコントロールする、システム的なコアをやっていたんです。その彼が営業部に来たんです。そこで、アペルザ eコマースの話がきた。(平が)実務ができて、連携がとれたから、やれると思った。ふたりでやっちゃおうって言って、それで今のECができました。両方を監督できる偉い人が決裁してくれるならいいんですけど、もしそういう人がいたとしても、実際にはこういう新しいことってやりたがらないということもあると思うので。

:だから実際導入するまでのハードルはあると思う。自分たちの場合は、「たいしたことないよ」と言い切って、社内ではやってしまう。まだ立ち上げ途中ですけど、実際、実務的なところは、アペルザさんもかなりサポートに入ってくれたので、その点はすごく助かりました。

逸見:あと大事なのは、数字に価値をつけること。そして、中長期的に取り組むこと。うまくいかない人たちは、それができていないケースが多い。成果を「売れました」にするのは簡単だし明確だが、一年じゃ結果は出ないし、何事も一年でうまくいくなんてありえない。一年目はチャレンジ、そのなかでゴールを作って継続的にやることが重要。そうしないとその一年の苦労がすべて水の泡になる。

 展示会だって即売会をやっているわけじゃないから、いつ売れるかなんてわからない。だから、多くの企業で(展示会を)認知獲得の活動と位置づけて、「名刺1枚いくら(の価値がある)」としている。ひとつひとつの数字に価値をつけること。そうじゃないと、とてもじゃないが継続できない。もし、一年で「売れない」からと言って、せっかく作ったページを全部消してしまったら、それは自分たちにとってもアペルザにとっても損。

これまでの暗黙の文化を裏返せるのは、実績だけ。
一緒に成長していこうと思ってアペルザを選んだ。

― アペルザを使っていて困ったこと、不満な点などはありますか?


:もっとこうしてほしいとか、こうなっていたらいいなと思うことは、しつこく伝えてるほうだと思う(笑)。例えば、昨年の12月に、サイト上での在庫表示(が分かりにくいこと)に関して、お客様から問い合わせをもらったときも、それをアペルザに伝えて、直してもらった。

 まだまだアペルザも助走、立ち上げの段階だと思うんですけど。自分たちも新しい製品を開発するし、その間にアペルザもサービスを開発して、認知度をあげ、SEO対策もして。

逸見時代が変わっていくなかで、自分たち自身も含めて、これまでのやり方を変えていかないといけないと思うんです。でも、これまでの慣習や文化を裏返せるのは実績だけ。我々もアペルザも、ひとつずつ、順番にやっていけばいいと思うんです。一緒に成長していこうと思ってアペルザを選んだので。アペルザも以前はそこまでメンバーも多くなかったと思う。でも、そこからの成長率を見て、将来性を信じた。

 だから、もっとみんなが「アペルザ」って名前を知っていたらいいなとは思う。自分も展示会でチラシを配るときには、特に若い人に向けては「アペルザで調べたら便利だよ」と教えてあげている。もちろん(お客様の対応で)忙しくなると、そこまで手が回らないですけど。だから、アペルザにも、もっと知ってもらえるようにがんばってほしい。

― ありがとうございました。

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漠然と感じていた“自分たちの一番弱いところ”
デジタル活用で、本来集中すべき業務に最大のパフォーマンスを。

メールをきっかけにポツポツと新しい商談が出始めている。

取材=2018年3月 ◎ 文・写真=中島陽太郎

 愛知県名古屋市に本社を構える三交企業株式会社(以下、三交企業)は、三菱電機のFA製品・省エネ機器製品等を取り扱う技術商社だ。従業員数は約50名、いわゆる中小企業である。三交企業の抱えていた課題は決して彼らに限ったものではない。多くの企業が頭を悩ませる、限られた営業リソースのなかで、いかに効率よく商談を獲得していくかという課題。
アペルザを導入して以来、三交企業は『メーカーと連携した定期メール配信』を継続している。三菱電機を中心に複数のメーカーと連携し、配信用のコンテンツを効率的に作成。従来のビジネスの延長だけではなかなか獲得できなかった商談の発掘にも成功している。三交企業がアペルザ導入を決めた背景、現在、そして今後の展望を聞いた。

― アペルザを活用してのデジタルマーケティング。このような新しい取り組みをスタートするに至った背景を聞かせていただけますか。

三交企業は今年創立70周年となります。それにあたって中期計画を立てています。その中期計画を実行していくにあたって、売上規模の拡大などのテーマがあるわけですが、従来のビジネスの延長だけではなかなか達成できない。「新たな取り組みが必要だ」という思いがありました。

今の会社の規模感、売上と利益というのはある意味最適化された状態です。人を増やせば良いのかというとそういうわけではありません。限られた営業領域のなかで、無闇に、あるいは無尽蔵に人を増やすことはできません。それよりも、効率よく商談を獲得する方法が必要でした。

今も、必ずしも営業担当が皆、個々のポテンシャルをいかんなく発揮できているか?パフォーマンスがしっかり発揮されているか?というと、そうではありません。なかなか手間のかかる仕事もこの業界では多くあるわけです。重要なのは、デジタル化できるところはしっかりとデジタル化して、アナログでなければならないところに関してはそのまま残すということです。

例えば『営業の効率化』という意味では、当初、PRツールとしてタブレットを導入することを検討していました。多くの取り扱い製品があるなかで、全ての資料を持ち歩くことは不可能です。タブレットを活用し、お客様の対面で、その時々で適した資料をお見せするということを検討していました。ただ、正直『メール配信』ということまでは考えていなかったですね。

アナログで行われるビジネスを円滑に進めるためにも、デジタルを活用することで業務効率を上げ、本来集中すべき業務に対してこそ最大のパフォーマンスを発揮してほしい。そんなことを考えていたなかご提案を受けて、そちらに向けて舵を切っていったというのが背景です。

アペルザが実施していたセミナーに参加したこともきっかけのひとつです。セミナーを聞いてピンときた、というわけではないかもしれませんが、漠然と感じていた“自分たちの一番弱いところ”が明確になりました。セミナーで話されていた他社の事例はとても参考になりましたし、非常にシステマチックにやられていて、「うちも取り組まなければならないな」と改めて思いました。そこから、アペルザさんのお話をお聞きするに至りました。

「三交企業から買いたい」と思ってもらえるように。
顧客との有益な情報交換と、商談の数を増やす。

― メール配信では、様々なメーカーと連携したコンテンツを配信されています。どのような狙いがあるのでしょうか。

弊社では三菱電機の機器製品を中心とする産業用電機機器の販売をやっています。そのなかでも我々としては『技術商社』というところを表に出して活動しています。我々は「三交企業から買いたい」と思ってもらえるような活動をしないと淘汰されてしまうという部分があると考えているからです。

弊社がメインで扱っている三菱電機の製品群は比較的シェアも高く、市場で受け入れられていますが、一方で代理店である弊社の存在感を示しにくくなっているのもまた事実です。誤解を恐れず言えば、お客様から見ると『買おうと思えばどこからでも購入できるもの』を扱っているわけです。

例えば、「このシーケンサはこういう部分が優れてまして…」とか「新しいGOTはこんな機能が追加されまして…」と、製品単品だけをPRして、それに対する「それいいね!」というお客様からの反応があったとしても、それは三菱電機が評価されただけであって、三交企業が評価されたわけでは全くないんですね。

そこに対してより良い提案、例えば、シーケンサ単品ではなく画像検査と組み合わせてお客様の困りごとを解決するような提案をするなどということをしっかりと行うことで、お客様に対する弊社のプレゼンスを上げていきたい、そういう想いを持っています。本来であれば、お客様との対面の活動のなかで、ひとつひとつ丁寧に説明していくのがベストです。しかし、すべての方と常時面談している訳ではありませんし、どうしてもPRに漏れが発生してしまいます。

アペルザを使えば、メールを通して我々のお付き合いしているお客様に広く、効率的に、そのような情報を展開することができます。お客様へのPR漏れ防止の意味もあります。パートナー連携機能により、メーカーとコンテンツの連携を行い、「三交企業ならこういう提案ができるんだよ」ということを展開していくことで、顧客との有益な情報交換と、商談の数を増やしていきたいと考えています。

パラダイムシフトはこれから。手応えは感じている。
メールをきっかけに新しい商談がポツポツ出始めている。

― 実際にメール配信をスタートされて、今のところ狙いどおりに進んでいるのでしょうか。

社内の報告でも、メールをきっかけにして新しい商談が出ましたというのもポツポツ出始めているので手応えは感じています。でも、狙いどおりかというと、まだ正直そこまでには至っていないというのが実感です。まだまだ不十分だと思っているので、どのようにもっと活かしていくかということを課題として持っています。

一方で副次的な効果についても感じています。今回のアペルザの導入で、社内の雰囲気として「少しずつパラダイムシフトしていきましょう」という空気ができてきました。実は来年度に、うちも大きな組織変更を行います。メール配信活動について、社長以下何度も会議を繰り返して、組織を変えていくことを決めました。

― 導入にあたりご苦労されたことや、現在の課題などはありますでしょうか?

メールを配信するためのデータベースの作成には、やはり時間と手間がかかりました。営業メンバーの持っている名刺を電子化しましたが、当初その(スキャニングの)精度に問題があり、使えるデータベースにするのに時間を要してしまいました。

現在の課題としては、メール配信をきっかけに発生した資料のダウンロードから、それを起点にした商談化への流れについて、まだ改善の余地があると考えています。ちょっと主旨からはずれますが、今、社内の教育計画、教育大綱をもう一度見直そうということで色々とプログラムを作り始めています。

実は私がアペルザさんのセミナーに参加して一番ピンときたのは、『ロープレ』の話でした。社内での訓練が何より重要だということを実感しました。自分自身も、昔先輩がお客様を訪問するのに同行して、その先輩の話し方を横で聞いて「なるほど」と思ったことを、実際に自分がお客様を訪問した時に真似しようと思った。けれども実際には上手くしゃべれない。でも、それを着実に繰返していくなかで徐々にレベルを上げていった。そんな経験があります。

最初から現場に行って試してみるというOJT的なものも否定はしませんが、実際の現場に行く前に、社内で徹底的に腕を上げてからお客様先に行くという話は、やっぱり「さすがだな」と感じました。教育計画でも『ロールプレイング』はもちろんスケジュールに入れました。4月採用の新人から試行錯誤しながら進めて行く予定です。併せて、指導する側のコーチングのスキルアップも進めていく予定です。社内の若手にするか、課長クラスにするのか対象の選定は今進めているところです。コンサル料が無料であれば、ぜひアペルザさんにお願いしたいと思います。(笑)

― 今後の展望についてお聞かせください。

これまでは製品単品をPRしていればよかった。しかし、そんな時代は終わり、今は顧客にメリットを与えられる提案ができるかどうかが採用のカギとなっています。そのためには顧客を知り、顧客も気付いていないような問題点を見つけ、弊社にしかできないような提案をしていく必要があります。

さまざまなメーカーの製品の組み合わせで、問題が解決できるような提案をしていき、弊社が一括して受注できるような活動を目指したいと考えています。

― お忙しい中貴重なお時間ありがとうございました

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