電気絶縁材料の専門商社である中央電材株式会社(本社:東京都昭島市)は、1951年に創業。産業電子機器の分野を中心に、電子ワイヤー、海外規格電線、ロボットケーブルといった各種ケーブル類や、絶縁チューブ、ケーブルアセンブリー、ユニット組立など幅広い製品を扱う。
全国8箇所に営業拠点を展開しており、顧客となる企業の開発設計部門に対して、部材選定のアドバイスや試作品提供などを行い、顧客ニーズの実現、原価低減をサポートしている。70名ほどいる従業員のうち、およそ1/3が営業職だ。提案型の営業スタイルに強みを持つ同社だが、一方で、提案の機会を得ることは、以前に比べて難しくなっている。企業のコンプライアンス強化により、工場への出入りは厳しくなり、以前のように気軽に技術部門や開発部門を訪問することができないからだ。
同社は2019年からアペルザクラウドを導入した。現在は訪問や提案活動の“きっかけ”作りとして、メール配信を活用している。今回、アペルザでは、同社においてメール配信を活用した営業施策を指揮する同社取締役 営業本部長の高野氏、そして運用に携わる仕入調達課 課長の岡部氏の二人に話を聞いた。
―現在の貴社の営業スタイル、またそのなかでのアペルザクラウドの活用状況について教えてください。
高野:基本的には提案型の営業スタイルです。弊社のお客様は、大きく括れば産業機器、産業機械関連が中心です。産業機器と言うと広いですが、例えば、自動車関連ですと、生産ラインの搬送や検査関連の機器、装置などがそうです。そうしたお客様に対して、部材選定のアドバイスや試作品提供などを行い、顧客ニーズの実現、原価低減をサポートしています。
重要なのは、技術部門や開発部門とのコネクションです。最近は企業側のコンプライアンス強化で、工場への出入りが厳しくなっていますので、気軽に技術部門や開発部門の方にお会いしたり、設計者と一対一で面談するのも、以前のようにはいきません。すでに接点がある場合はまだ良いですが、そうではない場合、購買部門への定期的な情報提供やヒアリングが重要になってきます。価値ある情報を届けることで、(購買部門から)技術部門や開発部門へ情報を展開、紹介してもらい、それによって営業活動を広げていくイメージです。
一方で弊社側の営業担当は、すべてのお客様に対して定期的にコンタクトできるわけではありません。拠点にもよりますが、各営業担当が持つエリアはとても広く、一ヶ月の間に訪問できるのは、それぞれが担当するお客様全体の1/3程度でしょう。そのため、お客様ごとに取引実績や規模をベースに“格付け”を行い、重点顧客から優先して訪問、フォローする形にならざるを得ません。結果として、前回の訪問から2-3ヶ月空くようなお客様も出てきます。
アペルザクラウドを使ったメール配信は、まさに営業活動、提案活動のきっかけを生む、お客様への情報提供を行うための有効な手段です。弊社の営業マンではフォローしきれない、コンタクトしきれないお客様に対して、営業マンの代わりにメール配信を行うことができます。弊社での取組み自体はまだまだ始まったばかりで、やっと最初の2回が終わったところです。特になかなか訪問できない遠方のお客様に対しては効果的で、第1回を終えた時の営業マンの反応を見る限り、メール配信であっても、訪問と同じぐらいの効果があったと言えるのではないかと思います。
―アペルザクラウドを活用したメール配信、実際の運用開始までにはいくつかのハードルがあったと聞きました。
岡部:顧客情報の登録が一番最初の関門でした。弊社では名刺がデータ化されておらず、アペルザクラウドに登録する顧客情報をどうデータ化するかについては、実は解決しきれているわけではありません。今回、最初のスタートを切るにあたっては、メールソフトから連絡先を抽出するという手段を取りました。
名刺がデータ化されていないとはいえ、お客様とメールでのやり取りはしています。それらの連絡先メールアドレスがメールソフト側に保存されていますので、データとして活用することにしました。
―なるほど、その発想はありませんでした。そこから実際の運用まではいかがでしたでしょうか。
岡部:メールの本文に頭を悩ませる日々が続きました(笑)。しばらくはずっと悩んでいましたね。週末も、実際に手を動かしていたわけではないですが、ふとしたときに思い出して、「メール考えなきゃ…」と考え込んでしまうんです。ただ途中で、考え方が良くなかったのだと気づきました。
ずっと、いわゆる“メルマガ”を送ることばかりを考えていたのです。企業が作ったPRメルマガみたいなイメージです。なので、他社のメルマガを見たり、Googleでメルマガの書き方を検索してみたりしては、「こんな文章、自分じゃ書けない…」と頭を悩ませていました。
そんなときアペルザさんから、「メルマガではなく、営業個人が送るようなメール」と聞いて、一気にハードルが下がりました。自分自身も元は営業の出身ですので、自分だったらお客様にどんなメールを書くかと考えたら、すごくイメージがしやすくなりました。実際に、その考え方で作ったメールの文面は、営業サイドにもすんなりと受け入れてもらえました。
―たしかに“メルマガ”を送るという考え方にとらわれてしまっている担当者は多いかもしれませんね。実際の配信では、第1回目から早速成果が出たと聞いています。どのような内容だったのでしょうか。
岡部:いろいろと悩んだ末に、第1回目の配信では、弊社で取り扱っている、とあるメーカーの製品紹介と、その在庫情報に関する配信を行いました。
実は「在庫情報」って意外とお客様にお見せできていない情報なんです。在庫品種はカタログにも載せていますが、それがどれだけあるとまでは出していません。当然在庫は変動するものなので、営業マンが訪問したときも、製品自体の紹介はしても、在庫確認は「必要になったらそのタイミングで」となりがちです。
高野:ここまでアペルザクラウドを使ってきて一番の発見は、「お客様のニーズに気付けた」ということでした。実際配信してみると、思わぬお客様から「こんなのもやってるんだね」という返信がきたんです。
すべてのお客様を人力で回るのは限界があります。そこにメール配信という手段を取ることで、これまでのやり方では当たりきれなかったお客様にも、ある意味“平等”に接触して、その興味やニーズが確認できるということは発見でした。事実、営業が「ここは紹介しなくていいだろう」と思っていた企業からも反響がありました。営業マンが無意識に「売れないだろう」と判断していた“先入観”が打ち破られたのです。
―これからメール配信、そしてアペルザクラウドが提唱する『データ営業』に取り組む方へ、アドバイスはありますでしょうか。
高野:とても基本的な部分ですが、「営業マンを納得させる」、そして「営業マンが動かなければすべて無駄になってしまう」ということです。
このような新しい取り組みはどうしても、ひと手間ふた手間、仕事が増えるという印象を持たれがちです。例えば、施策から反響があったお客様をフォローするにしても、果たして本当に成果につながるのかを営業マンは考えます。
実際、メール配信を活用して、営業の取りこぼしをすくっていくという施策のイメージを、始めはみんな持てていませんでした。いわゆる“メルマガ”が勝手に(お客様のところへ)送られてしまうと勘違いをしていたり、そもそもの施策の趣旨がちゃんと伝わっていなかったり。それは各自が提出してきた配信対象のリストの数にも如実に表れていました。この施策に可能性を感じているメンバーほど、多くのアドレスを出してきました。
そこで第1回目の配信は、まずはみんなになぜこの施策をやっているのかを理解してもらうため、とある営業所に限定する形で実施しました。営業個々人が、なぜメール配信をやっているのか、気持ちがリンクしないと、ただ仕事が増えただけの印象になってしまうからです。実際、第1回目の施策が終わり、その結果を全体へ共有したとき、初めてみんなにもこのイメージが伝わりました。
―今後の展望について教えてください。
高野:メール配信はあくまで訪問のきっかけです。仮にメールを受信した購買担当者が、設計側へ情報を展開してくれたとしても、一度も会ったことがない弊社の担当に依頼、相談はしづらいものです。まずは営業からのフォローを徹底し、提案の機会をいただくところから始まります。
こればかりは自分たち次第だと感じています。今後はアペルザクラウドでの配信結果のレポートをベースに、営業側のプロセス管理もやっていきたいと思っています。施策を通して生まれた案件の確度を上げていけるよう取り組んでいきます。